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ボーッと何かを・・・ 日々の考えの備忘録


by hiroi22

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うふふふの「反社会学講座」

 パオロ・マッツァリーノ著「反社会学講座」を読んでいる。面白い。抱腹絶倒というよりも、ムフフと笑わせる。うふふふの「反社会学講座」_d0007533_22353044.jpgこの本は、章ごとに講義をおこなっているという設定になっているが、至る所に知的刺激がちりばめられていて楽しませる。そして、世間のうさんくさい常識に挑戦している本であるとも言える。この本を読んでにやりとすれば、凝り固まった固い頭も少しは柔らかくなると思われる。具体的に気に入ったところを2、3書き留めておく。
 まずは「第2回(講義):キレやすいのは誰だ」が痛快だ。「最近の若者はキレやすい。少年による凶悪犯罪が多くなった。」という“常識”を木っ端微塵に砕いているのである。それも身勝手な理屈を並べているのではない、統計データを駆使して論証しているのである。
 筆者はここで戦後最悪最強の少年世代はいつか「戦後最悪凶悪少年決定戦、略して凶−1グランプリ」を検証する(いいねえ、このネーミング)。いくつかの統計データを提示して、論証を加えた結果、筆者はこう宣告する。
というわけで、本日ここに戦後最もキレやすかった少年が決定致しました。グランプリは昭和35年の17歳、つまり昭和18年生まれで西暦2001年現在58歳の方々です。おめでとうございます。
ガハハ!なんだ、「近頃の若いものは...」とかエラそうに言っている64歳(2007年現在)のご老人方よ、あなたたちより今の若い人たちの方がおとなしいじゃない!そういえば、私の職場でも、すぐにキレて大声を出し、身勝手でスタンドプレーが好きなご老人がいるが、彼はこの世代である。(彼がもうすぐ定年でよかった。)
 さらに筆者は返す刀でこうも言う;
 ついでにいわせていただくと、テレビゲームでこどもがキレるというのもウソだとわかりました。昭和30年代には素晴らしく高性能なゲーム機など、存在しなかったはずです。食べ物をキレる原因とするのも無理があります。だったら、当時の給食でおなじみのクジラ肉や揚げパンは、ファーストフードより遙かに危険な食品だという結論になってしまいます。
ふふふ..(^0^) ついでにもう一つ。
昭和23年の(少年による;管理者注)強盗件数は戦後最高の3878件。これは戦後の混乱期だったことを示します。当時の17歳は、教育勅語による学校教育を受けています。近年、教育勅語の有用性を訴える老人がいらっしゃいますが、なんの効果もないことが証明されました。人間、食うのに困れば、盗みを働くのです。道徳教育を強化したところで、犯罪の抑止効果は期待できません。
あははは。

 常識を打ち砕くという意味では、「第6回 日本人は勤勉ではない〜本当に新しい歴史教科書・PART1〜」および「第7回 続・日本人は勤勉ではない〜本当に新しい歴史教科書・PART2〜」もインパクトがある。本題に入る前に、次の皮肉が笑わせる。
日本では、おばちゃんのアルバイトだけをパートといって区別する習慣があるのですが、これはなんとも不思議です。英語だと全部パートタイムですね。この辺には、なにか民族学的な理由が隠されているのかもしれませんが、それは専門家の研究を待ちましょう。どんなささいなことにも噛みついてくるフェミニズムの人たちが、これを女性差別だと騒がないのも、また謎のひとつです。
本題の「勤勉さ」については、まず歴史を掘り起こすことから始める。
 新しいものを疎んじる守旧派のみなさんに、残念なお知らせがあります。フリーターは江戸時代から存在した、由緒正しい生き方なのです。
(中略)
 慶應元年(1865年)、麹町12丁目。143人の戸主(世帯主)のうち、38人が日雇い仕事で暮らしていました。約26%です。同年、四谷伝馬町新一丁目では96人中13人で14%。こちらは住民に武士が多い土地柄なので、数字が低くなっています。慶應3年、宮益町では172人中69人で40%にものぼります。さすがに現代の日本で、世帯主の4割がフリーターという話は聞きません。江戸の世では、結婚してもフリーターでいるのがおかしくなかったのです。
(中略)
 江戸時代の町人たちは、経済発展などとは無縁でも、適当に楽しく暮らしていたのです。日本人がもともと勤勉な民族だったというのがウソッパチであると、納得していただけたことと思います。古くは、平城京建設に駆り出されたものの仕事がつらくて逃げ出した人たちがいました。それがあまりにも多かったので、取り締まる専門の役所が必要だったくらいです。当時の大人たちも、「近頃の若いやつらは、仕事がつらいからって、すぐにやめやがる」となげいていたのです。
 江戸時代のことよりも現代はどうなんだということについては、こう語る。
 ここに、『証言・高度成長期の日本』という資料があります。これは、当時の状況を冷静に振り返った証言がつづられている、貴重な資料です。日本人は昔から何ひとつ変わっていない、進歩も改革もないことがはっきりします。
(中略)
勤勉さの検証です。加藤日出男さんはこう語ります。昭和40年代には店員や職人の給料がもの凄い勢いであがりました。そのため、苦労してつまんない職場にいるのはバカらしい、といって、イヤな職場はすぐにやめる人が多かったのです。

 また、こんな話もあります。農家の息子が家を継ぐのをいやがります。父親は「ばかやろう、農家をやらないのか」と叱りますが、息子は都会へ出ていきました。数年後、息子が帰郷すると、父親は農業をやめて、ドライブインのオーナーになっていました。

 勤勉の象徴であるはずの農家でさえ、土地を売ってガソリンスタンドやレストラン経営に鞍替えする例が少なくなかったのです。

 イヤな仕事はすぐやめて、楽そうな仕事、おもしろそうな仕事に就く。これは、いまに始まったことではないのです。捏造民族観に洗脳された方は、この事実を不愉快に受け取ることでしょう。しかし、私の提唱する「人間いいかげん史観」に則れば、当然のこととして理解できるのです。イヤなことをやめるというのは、人間の本性です。自然な姿です。そこには自然淘汰の力がはたらいているのです。

 たとえば、カリスマ美容師を志す若者は大勢いますが、その大半は途中でイヤになってやめてしまいます。それをとやかくいっても始まりません。仮にもし全員やめずに残ってしまったら、日本中美容師だらけになってしまい、人口1人当たり1.5人の美容師がいるなんて事態にもなりかねません。これはこれで困った世の中です。
 「少なくとも高度成長期にはみんな真面目に勤勉に働いた」という声には冷徹にこう断言する。
 そうでしょうか。現在、日本中で鉄筋コンクリート建築が崩壊の兆しを見せています。小林一輔さんの『コンクリートが危ない』によれば、そういった手抜き工事のほとんどが、東京オリンピック(昭和39年)以降の高度成長期に作られたものだとのことです。材料をケチり、工期を短縮し、ただひたすら純利益をあげることにのみ邁進する。これが高度成長期の「勤勉」の正体だったのです。どんなインチキ仕事でも、やっつけ仕事でも、数さえこなして金が儲かりゃいいんだ。会社は慈善事業じゃねえんだよ——

 高度成長期とは、職人気質がカネの力に負けた悲しい時代でもあったのです。
そうだよなぁ。「手抜き工事」の類いの話は今でもよく聞くもんなあ。 
 とまあ、このような刺激が至る所に満ちあふれた本である。ただし、「勤勉さ」について断っておくと、筆者は「勤勉でない日本人」を非難しているわけではない。この章はこう締めくくっている。
 ここいらで認めたらいかがですか。日本人はいいかげんな民族なのだ、と。そして、そこからまた始めるべきです。がむしゃらに働き、敵を食い尽くすという欧米の白人エリートのようなやり方は、日本人の体質にはマッチしないのです。だって、休暇もそうじゃないですか。白人は何週間もまとめてガッととりますが、日本人はそのやり方に馴染めません。週休3日くらいのペースで、適度にちびちび働き続けるのが、日本人の性格に合っているのです。

 昔はよかった。たしかにそうです。西洋文明のサルまねを始める以前の日本人の生き方は、本当に素晴らしかったのです。

 自分の常識をつぶされて不愉快な思いをする人もいるかもしれませんが、もちろん、何を信じようと思想信条は自由です。しかし、もし不満を持つのなら、彼の言説に反論すれば面白いと思います。ただし、きちんと論証する必要があります。子供の喧嘩のような言いがかり(ネットでよくお目にかかります)では意味がありません。
by hiroi22 | 2007-03-10 23:42 | じっと思う

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