ボーッと何かを・・・ 日々の考えの備忘録


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ポアンカレ予想解決の論文が出版されたのだけれど...

 ポアンカレ予想解決の論文が出版されたというニュースが伝えられた.
人民日報:中国人数学者、難問「ポアンカレ予想」を証明
毎日新聞:難問数学:「ポアンカレ予想」証明か 中国人数学者が論文
 普通,こういうニュースを聞くと「へえ,すごい!」ということになるのだけれど,今回は少し違う.先日も書いたように,この予想の解決自体,ロシア人数学者ペレルマン(Perelman)が既にアナウンスしている.単にアナウンスしただけではなく,その論文の草稿もかなり流布していて,各国の数学者がいろいろな形で検討していると聞く.そういう状況で,突然中国人数学者二人の共著論文が出版されたのである.タイトルと雑誌は以下のようなものだ.
A Complete Proof of the Poincaré and Geometrization Conjectures - application of the Hamilton-Perelman theory of the Ricci flow
by Huai-Dong Cao and Xi-Ping Zhu

Asian Journal of Mathematics
Volume 10, Number 2 (June 2006)
165-498
 以下は彼らの論文を見ないでのクレームである.しかし,そんなに大きく的は外していないと思う.
 数学の学術論文ではオリジナリティが問題になる.結果の新しさや方法の新しさである.ところが,この論文,そのオリジナリティはどこにあるのか?
 論文のタイトルには "applcation of the Hamilton-Perelman theory"とある.こういった場合普通 "application(応用)"というのは,既知の理論を何か別の分野,問題に適用するという時に使われる.しかし,彼らが応用する理論は"the Hamilton-Perelman theory of the Ricci flow"であり,まさにPerelmanがポアンカレ予想を解くために用意したものである.これでは,Perelmanの理論を彼の提唱通りポアンカレ予想の解決に適用したということではないのか?ならば彼らの真のオリジナリティはどこにあるのだろうか?
 もちろん,数学というのは厳密な論法を要求するから,Perelmanの議論,論文をきちんと検証することは重要なことである.しかし,それをしたからといって,この世紀の予想を自分たちで解決したといえるのか?
 さらに不可解なのは,彼らの論文を出版したAsian Journal of Mathematicsという雑誌である.毎日新聞の記事によれば,小島定吉・東京工業大教授(幾何学)は「論文が発表された雑誌は専門家の間で信頼が厚い。」と述べているそうであるが,世紀をまたぐ大問題解決の発表雑誌としては役不足と感じる.ポアンカレ予想ほどの大問題を解決したとなると,自然科学系でのネイチャーにあたるような,数学界における最高クラスの学術雑誌で発表しようとするものである.そういった雑誌は査読も厳しく,掲載されるのは困難だが,そのような雑誌に掲載されればその論文は高い評価を得る.だから研究者は,自信のある論文はそのような雑誌に投稿するし,雑誌の方も高いレベルを維持するために優秀な論文を掲載するのである.
 ここからは邪推である.一つ考えられるのは,彼らの論文もそのような雑誌に投稿したのではないかということだ.しかし,おそらく私が上に述べたような観点から掲載を拒否され,Asian Journal of Mathematicsに発表ということになったのではないか.Asian Journal of Mathematicsという雑誌は,editorial boardに中国人数学者がずらりと並び,chief editorsの一人は中国人数学者のドンであるから,彼らの論文も掲載されやすかったのだろうと思う(重ねていうが,私の邪推である).

 フェルマーの最終定理を証明したA. Wilesは自分のアイディアを人に漏らすことなく何年もたった一人で研究していた.フェルマーの最終定理の証明の完成後,その姿勢を非難されたという話を聞いたことがある.つまり,彼が自分のアイディアをもっと早く公開していれば,世界中の研究者の力を合わせて,定理の証明がもっと早くなり,数学の進歩にさらに大きく貢献できたのではないかというわけである.しかし,今回のことを見るとWilesの姿勢も無理からぬ気がしてきた.あまり気分の良いものではないけれど.....
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by hiroi22 | 2006-06-07 22:18 | じっと思う

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